(4)ゆとり教育と新・学習指導要領。
2011年度より施行される新・学習指導要領。「学習指導要領」という言葉を聞いたことのある人は多いかと思いますが、では果たして「学習指導要領」とはどういったものなのでしょうか?そして、今回の改訂により何が変わるのか?ことさらに悪者扱いされている「ゆとり教育」を通して、その内容について考えてみましょう。
まず、学習指導要領とは全国どこで教育を受けても同レベルの水準の教育が受けられるように、“どの学年で、どの内容を、どれだけ学習するか”を示したガイドラインのことをいいます。公立、私立を問わず小学校、中学校、高校まではこの指導要領に沿った授業が実施されていきます。(但し、実際には多くの私立学校で独自のカリキュラムを組んでいるのが現状)
指導要領自体は大綱的な内容であり、その内容はごく抽象的なものとなっています。それを補足説明するものとして、各科目毎に「解説」というものが要領と一緒に出されます。各学校で行われる実際の授業内容はその解説の内容に沿って行われます。「解説」は指導要領とは異なり、“必ず出さなくてはいけない”というものではありません。しかし、先述したように学習指導要領自体は大綱的なものであり、授業内容自体本来的には個々の現場の創意工夫に任されるものであります。しかし、その反面で全国どこでも同水準レベルの教育が受けられることを目的としたものであるために解釈のズレを防ぐため、細かな解説が求められるようになったのです。
「解説」には法的拘束力はありませんが、その影響力は大きく、学校の授業で使われる教科書は解説の内容に沿った形で編集が行われます。学校教育は学習指導要領により方向性とスケジュールが組まれ、各科目毎の細かな授業内容は解説(=教科書)によって決められているのです。
今回、見直しが行われる新・学習指導要領ですが、実に30年振りの授業時間の増加が実施されます。これにより小学校は6年間で278時間増え5645時間、中学校は3年間で105時間増え3045時間となります。これは“ゆとり教育”による学力低下の批判を受け、いまひとつ曖昧であり存在価値に多くの疑問が投げかけられていた「総合学習」の削減とともに中学選択科目も削減し、一方で主要科目の授業時間を増やし、増加した時間を「基礎・基本の習得」に充てることで知識の定着をはかっています。これは実質的に“ゆとり教育”からの脱却と決別を宣言し、その失敗を認めたということになります。
当初、ゆとり教育は一時の偏差値至上主義からの脱却を目指し、「生きる力」、「自分で考える力(自主性)」を養うための教育として進められてきましたが、実際には国、学校、保護者、社会そして何より子供達の間に充分な理解と認識を得る事ができず教育現場の困惑を生み、削られた授業時間がそのまま学力低下へと結びついてしまいました。ゆとり教育の理念自体は必要なものであり、間違った方向ではないのですが、その実施の仕方と準備が足りなかったということでしょう。
今回の見直しにおいて英語、国語といった言語科目では「読み」、「書き」に重点をおいた従来の内容から「聞く」、「話す」といった言語能力自体の向上に向けた内容に改訂がなされています。理数系科目においては疑問視されていた、簡略、削減された知識の復活に加え、授業内容も知識のつめこみでは無い、思考を伴う指導方針への転換がなされています。こうした改訂は現場、有識者からは「未だ不十分」または、せっかく根付いてきた矢先の方針転換に不安と戸惑いの声が上がっています。
知識とは定着させることに意味があり、いかにして定着させるかを考える必要性があります。それには思考する力を養い、自分で考えて行動するという習慣が必要になってきます。そしてそれこそが実は“ゆとり教育”の目指していたところなのではないでしょうか? |
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